ネットワークサービスにおけるプライバシーに関する研究
概要
ネットワークサービスにおける、プライバシー情報の適切な取扱いはどうあるべきか、現状の社会制度のもとで効率的な解決法は何か、そのために必要な技術は何か、といった研究を行っています。
研究の背景
ネットワークサービスが発達し機能が高まるにつれ、サービス間の連携、履歴情報の活用が活発に行われるようになってきました。このような高機能なサービスの提供で便利になる一方、単一のサービスでは問題にならなかった情報が、集約され処理されることでプライバシー情報となる場合があり、その不適切な扱いが大きな社会問題となっています。現在、サービスの利便性とプライバシーの保護を両立する方法、さらに、ユーザが自身の情報がどのように使われるのかを適切に理解できる方法が求められています。
研究内容
匿名化手法とその指標の提案および評価
このようなプライバシー問題を技術的に解決する方法として、情報の匿名化手法が提案されています。匿名化とは、データの集合を加工することで、個人を特定できない情報に変換する手法です。変換後のデータにおいて、個人の特定され難さを測る尺度として、匿名化指標も種々提案されています。我々の研究グループでは、このような手法や指標の提案、実データを用いた有効性の評価などを行っています。
技術情報の発信
我々は、技術的観点から意見を述べることも重要だと考えています。我々の研究グループは委員として、また組織として、政府系を含む各種委員会や業界団体に参画しています。これら活動を通じ、技術文書を作成したり、パブリックコメントを提出したりしています。
担当研究者
主な研究成果
- 論文発表
- 2013年度
- 国家による個人識別番号とその利用システムのあり方 〜 プライバシーの観点から, 高木浩光, 山口利恵, 渡辺創, 情報処理学会研究報告, Vol.2013-CSEC-61, No.29, pp.1-8, May 2013.
- スマホアプリにおけるアプリケーション・プライバシーポリシー掲載の現状調査, 一瀬小夜, 高木浩光, 山口利恵, 渡辺創, 情報処理学会研究報告, Vol.2013-CSEC-62, No.62, pp.1-7,July 2013.
- 「完全な匿名化」幻想を超えて, 板倉陽一郎, 伊藤孝一, 菊池浩明, 高木浩光, 高橋克巳, 中川裕志, 疋田敏朗, 廣田啓一, 山口利恵, 渡辺創, 2014年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2014)予稿集, 3D1-4, Jan. 2014.
- スマホアプリにおけるアプリケーション・プライバシーポリシー掲載の国際比較調査, 一瀬小夜, 高木浩光, 渡辺創, 2014年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2014)予稿集, 3D1-1, Jan. 2014.
- 2012年度
- Applicability of Existing Anonymization Methods to Large Location History Data in Urban Travel, Rie Shigetomi Yamaguchi, Keiichi Hirota, Koki Hamada, Katsumi Takahashi, Kazutaka Matsuzaki, Jun Sakuma, Yasuyuki Shirai, Proc. of IEEE SMC, IEEE, Oct. 2012.
- Androidアプリケーションにおけるパーミッションの有効性調査, 下野恵実子, 山口利恵, 高木浩光, 小川貴英, 2013年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2013)予稿集, 1C2-4, Jan. 2013.
- 2013年度
- 技術文書への貢献
- 「地方公共団体における情報システムセキュリティ要求仕様モデルプラン(Webアプリケーション)」(技術監修・委員), 財団法人地方自治情報センター(LASDEC), 2012年10月22日.
- パブリックコメント提出:
- 「スマートフォン プライバシー イニシアティブ −利用者情報の適正な取扱いとリテラシー向上による新時代イノベーション−」の公表, 総務省, 2012年08月08日.
- 「一般利用者が安心して無線LANを利用するために」, 総務省, 2012年11月2日
- 「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」論点整理に対する意見の募集の結果, 総務省, 2013年05月17日.
- 「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」報告書の公表, 総務省, 2013年06月12日.